『ウェッジの「バウンス角」についてのお話』
今回はウェッジのバウンス角についてお話をさせていただきたいと思います。
「ウェッジの」と私が書いていることからもおわかりいただけますように「バウンス角」というのはウェッジ(※)のみならず、すべてのアイアンに設けられています。
※ ウェッジ:ピッチングウェッジ/アプローチウェッジ/サンドウェッジなどのクラブのこと
その前に
そもそも「バウンス角」って何?
という方もいらっしゃると思いますので、まずは「バウンス角」についてご説明することにしましょう。
❑ バウンス角とその目的
「バウンス角」というのはクラブのソール(底)の
フェース寄りの部分(リーディングエッジ)とバックフェース寄りの部分(トレーディングエッジ)の織りなす角度
のことです。
こう言葉で説明されてピンとくる方は少ないと思いますので下の絵をご覧ください。
絵の中の「A」で示された「角度」のことを
「バウンス角」
と言います。
バウンス(bounce)というのは英語で「弾(はず)む」という意味で、バウンス角はアイアン(ウェッジを含む)を地面や砂に打ち込んだ際に地面や砂に潜(もぐ)りすぎることを防ぐ効果があります。
バウンス角が画期的なアイディアとしてゴルフ界に入ってきたのはサンドウェッジが開発された1930年前後になります。未読の方はこちらもご参考になさってみてください。
バウンス角を分類しますといくつかに分けることが出来ますので次にそちらを一緒に見ていくことにしましょう。。
❑ バウンス角の分類
まずはバウンス角の角度の大小で分けることを覚えましょう。
「単品」のウェッジを購入するときには重宝しますよ♫
ただし、どの角度のものから「バウンス角が大きい」あるいは「バウンス角が小さい」かということには厳密な定義はなく、そのゴルファーまたはゴルフメーカーによって多少角度に関する認識のズレがあり得ますので、その点をご承知おきください。
ただし、ご安心ください。これからあなたにご紹介します分け方で私は35年間困ったことはありませんので。
◆ ローバウンス
バウンス角0度〜9度の「バウンス角」の小さいものを
ローバウンス(Low bounce)
と覚えておきましょう。
◆ ハイバウンス
バウンス角12度以上の「バウンス角」の大きいものを
ハイバウンス(High bounce)
と覚えておきましょう。
一流メーカーのアイアンセットの中に入っているサンドウェッジは「ハイバウンス」となっています。
なお、10度・11度のものは人によりまして「ローバウンス」に分類するか、「ハイバウンス」に分類するか別れるところです。
◆ マイナスバウンス角
バウンス角は何もソールが地面と平に接する「0度」が最低ではありません。
「-1.0度」といったマイナスのバウンス角もあります。
ですから、
「プラスのバウンス角」と「マイナスのバウンス角」という分類もある
わけですね。
ただ、このことは頭の片隅に置いておくだけでOK👍です。
❑ バウンス角の選択法
さて、次にウェッジを購入する際に
バウンス角を選ぶことが出来る場合にはどのように選べばよいか?
ということについて一緒に学びましょう。
まずローバウンスとハイバウンスのそれぞれの利点について列挙しますね。短所は裏返しということになりますよ。
◆ ローバウンスの利点
◯ フェースを開いてもバウンスが大きくなりすぎない。
◯ 地面(特に硬い地面)からのアプローチの際にソールが跳(は)ねづらい。
◆ ハイバウンスの利点
◯ フェースを開かなくともバウンスが既に十分にあるのでバンカーショットに向く。
◯ フカフカの細かな砂が大量に入っているバンカーではクラブが潜(もぐ)りづらいので有利。
◯ 深いラフでもバウンスが効くのでアプローチがしやすい。
さて簡単にそれぞれの利点を見たところで上級者は自らにフィットしたものを知っているので、今回は初/中級者向けにウェッジのバウンス選択のアドバイスを致しましょう。
◆ バウンスの異なるウェッジを2本持とう!!
それぞれのバウンスの利点のところでもご説明しましたように「ローバウンス」、「ハイバウンス」それぞれに長所と短所があります。
それでは
その中間の10度/11度のバウンス角で「どちらも得よう」😁
という考えが浮かぶかもしれませんが、技術に乏しい間は
「どちらも得よう」として「どちらも得られず」😱
という中途半端な結果になりがちです。
プロの選手は練習日にラウンドするコースの芝質や地面の硬さ、砂の状態に合わせてウェッジのバウンスを変更することが出来ますが、私たちにはそういうことは出来ません。
砂質に合っていないバウンス角のサンドウェッジでバンカーショットを成功させるのは技術のあるゴルファーでも至難の技です。
そこで、キャディーバッグの中に「ローバウンスのウェッジ」と「ハイバウンスのウェッジ」を忍ばせておくことをお勧めします。
そしてボールがバンカーに入ったら、両方のウェッジを持っていきましょう。
ただし、同じロフト角のウェッジでは芸がないので56度/60度とロフト角をそれぞれ変えましょう。
「ローバウンス」には60度、
「ハイバウンス」には56度
がおすすめです。
ウェッジの本数を増やしますとフェアウェイウッドもしくはユーティリティーを1本減らさないといけなくなるかもしれませんが、スコアメイクに貢献するのはウェッジの方ですし、使用頻度(ひんど)もウェッジに軍配が上がります。
ここで「ローバウンス」と言いますと、地面に弾(はじ)かれないようにとウンとバウンス角の小さいものにしようと思う方がいらっしゃるかもしれませんが、バウンスというのは「地面に深く潜りすぎないようにするゴルファーのための技術」だったことを思い出していただきますと、
「あまりにもバウンス角の小さいウェッジは難しい」
ということがおわかりになると思います。
ですから、8度のものあたりが望ましいと思います。
そして「ハイバウンス」の方には12度以上のものがおすすめです。
この2本で「硬い砂」、「柔らかい砂」、「フェアウェイ」、「深いラフ」と技術を付けなくとも、クラブで対処できる可能性が広がります。
念のために申し上げておきますと、アプローチの基本の練習は必要です。
クラブセッティングを「ローバウンス」/「ハイバウンス」のウェッジ2本体制にしただけでうまくいくということはありません😥
からね。その点、お間違いの無いようにお願いしますネ。
❑ よくある誤解
さて、今回も「バウンス角」についてずいぶんと学びを深めてきましたね。
ここで「バウンス角」に関しましてアベレージゴルファーがしばしばされる誤解についてお話しておきたいと思います。
◆ ローバウンスの方が良い
頭の中で考えていますと何だか「ローバウンスの方がクラブが地面に弾かれずにキチッとボールに入るので良い」というふうに思えてきます。
しかし、これは頭のなかで考える幻想なのです。
「バウンスをソールの出っ張り」と思い込んで考えますと、地面に当たったクラブが大きく弾んでボールの頭を打つトップボールになるというイメージができそうですが、実際にはそのようにはなりません。
私は仕事柄、多くのゴルファーのアプローチを拝見しますが、
トップしているのをバウンス角のせいにされている
ゴルファーのほとんどがバウンス角のためにトップしているのではなく、
アプローチの基本技術が出来ていないため
にトップされています。
こうしたゴルファーがトップするからと言って「ローバウンス」のウェッジに取り替えても成果は出ません。
その点は注意が必要です。
あなたのアプローチ/バンカーの問題が「バウンスのせい」なのか「腕の問題」なのか、ご心配な方はゴルフのインストラクターに見てもらいましょう。
また、プロの試合のように特別に短く刈り込んでいない限り、関東近辺のゴルフ場では芝の性質上、ボールが若干浮いていることが多いので、アベレージゴルファーに取りましては「ハイバウンス」の方がクラブがボールにキッチリ入ります。
技術のない人が「1本だけ持つ」のであれば「ハイバウンス」をお勧めします。
「ローバウンスは技術がさらに必要」と覚えておくとよいでしょう。
❑ プロのバウンスを見てみよう!
最後に何人かのウェッジ名手のプロの選手のバウンス角を一緒に見てみることにしましょう。
◆ タイガー・ウッズ選手
タイガーの全盛期、彼は奇跡的なウェッジショットを要所要所で決めていました。
彼のウェッジはクリーブランドクラシック → タイトリスト → ナイキとメーカーは変わりましたが一貫してサンドウェッジとして使用していた60度のウェッジのバウンス角は「ローバウンス」でした。
ナイキのウェッジで活躍していた終盤は60度のバウンス角6度というモデルを愛用していました。
アメリカのPGAツアーの会場はフェアウェイが硬いところが多く、多くの選手が「ローバウンス」のクラブを使用しています。
◆ ローリー・マキロイ選手
マキロイ選手が彗星のように登場してきた当時、彼はタイトリスト社と契約していまして、サンドウェッジとしてタイトリスト ボーケイの60度、バウンス角4度というモデルを愛用していました。その後、ナイキ社を経て現在はテーラーメイド社のミルドグラインドウェッジの60度、バウンス角9度のものを使用しています。
◆ ルーク・ドナルド選手
日本の男子ツアー『ダンロップフェニックストーナメント』を連覇している小技の名手、英国のルーク・ドナルド選手がその当時愛用していたのがミズノのMPシリーズの60度のバウンス角5度のモデルです。
◆ フィル・ミケルソン選手
世界で3本の指に入るウェッジ使いの名手であるフィル・ミケルソン選手(※)はPGAツアーでは珍しくバウンス角の多いウェッジを好みます。
※ ミケルソン選手のウェッジにつきましてはこちらの記事がございます。未読の方は是非どうぞ。
『ウェッジ使いの名手ミケルソンが愛してやまなかったウェッジ』
今回はウェッジの使いの名手フィル・ミケルソンが愛したウェッジについてのお話になります。 フィル・ミケルソン(以下、ミケルソン選手)は有名なプレーヤーです…
記事の中にあります。彼が愛したPING EYE2の60度のウェッジは60度のウェッジとしては非常にバウンス角の大きい13度というバウンスが標準設定となっています。
これまでご紹介しました選手との角度の違いがおわかりいただけると思います。
彼は多いときには52度・56度・60度・64度とピッチングウェッジも含めればウェッジを5本もセッティングに入れていますが、全て比較的バウンスの大きいものを使用しています。
◆ 不動裕理選手
日本女子ツアーで50回という圧倒的な勝利数を誇っている不動選手は56度のウェッジ1本でこなすタイプの選手でした。彼女が終盤使用していたのがタイトリスト ボーケイの56・10というモデルです。
「56・10」の「56」はロフト角を「10」はバウンス角を示しています。
下の画像は52・08のものです。52・08の前に付いている「2」は200シリーズの「2」でこのクラブのモデル名を示しています。
このようにデザインの中に「ロフト角」と「バウンス角」の情報が盛り込まれています。もうあなたにはこのクラブがどういうクラブかはおわかりですね!
◆ 菊地絵理香選手
アプローチが上手な菊地絵理香選手はタイトリスト契約なので不動選手と同じボーケイを使用していますが、別モデルの58・06というモデルを愛用していました。
さあ、バウンス角一つでココまでお話してまいりました。
お付き合い有難うございました。最後におまけです。
一般的に「ローバウンス」のウェッジはソールの幅が広め、「ハイバウンス」のウェッジはソールが狭めになっています。
それぞれのバウンス角のマイナス点を補うようにソール幅が決められているわけです。
ゴルフクラブというのはつくづくよく考えられているなぁ〜と感心します。
今回もお読みいただきまして有難うございました😄
また一緒に楽しみましょう!!