『七海メンタルを学ぶ(11):心が安らぐお話(1)』
今回はプロゴルファーを目指す研修生七海(※)がその心の師である和尚と「心が安らぐお話(1)」というテーマでメンタルに取り組んでいるところにお邪魔して一緒に学ばせてもらいましょう。
※ 七海は女子プロゴルフのプロテスト突破を目指す18歳の研修生。技術だけでなく、自分の能力を発揮し切るための「メンタル」の重要性に気づき、2017年夏から和尚の指導を受けはじめた。
七海:
和尚、こんにちは。
お邪魔します。
和尚:
よお✋ 七海、ようこそ!
お入り。
七海:
和尚、朝晩めっきり寒くなってきましたね。
和尚:
おお、そうだね。
ゴルフのラウンドも朝晩は冷えてきたでしょう?
ラウンドの具合はどうかな?
七海:
ほら、和尚に「観察」を教えていただいたじゃないですか?
自分ではまだまだなんですけど、それでも「観察」をやり始めたときよりかは「観察」出来るようになってきたんですよ。
それと「観察」出来ていなくとも、「観察していなことに気づくこと」が速くなったような気がしています😄
それで、そのせいかどうかはわからないのですが、全体的に以前よりも落ち着いてプレー出来ている感じがしています。
和尚:
そうか、そうか。
それはいい傾向だね。「観察」が以前よりも向上しているってことは
「集中力が増してきている」
ということだから、まあ、それだけでもゴルフに役立っているはずだよ。
さあ、今日もしっかり学んで帰ってよ。
今日はね、七海に「七里(しちり)和尚」という和尚に起きたお話をしたいんだ。
七海の「七」に七里和尚の「七」で「ラッキーセブンが二つ」と来たから、こいつは縁起がいい😄
まあね、七海には「メンタル法話なのにどうしてこんな話をするのかしら?」と思うかもしれないけれど、何も精神のことを理論的に直接学ぶだけが、七海の「メンタル」に対処することではないからね。
まあ、聴いておくれよ。
【七里和尚のお話】
昔、今の福岡に「七里和尚」という和尚がいました。
ある時、和尚のところに泥棒が入りました。
泥棒:
おい、和尚! 金出せ。
和尚:
ああ、金か、金ならちょうど今日寄付をいただいたところだからこれを持って行きなさい。
泥棒:
おお和尚、モノわかりがいいな。じゃあな👋
和尚:
おっと、お前さんちょっと待ちなさい。
泥棒:
なんだ!
和尚:
見るところ、お前さん、ろくな着物を着ていないじゃないか?
ちょうどよかった、これがあるから着て行きなさい。
泥棒:
おお、そうか。
では、もらおう。じゃあな👋
和尚:
ああ、ちょっと待ちなさい。
泥棒:
何だ?
まだ何か、くれるのか?
和尚:
ああ、いやいや。
あのな、人から物をもらったら「有難う」と言うんじゃ。
泥棒:
そんじゃ、「有難う」。
・・・・・・
時は流れて、ある時、警官が和尚を尋ねてきました。
警官:
和尚、困るじゃないか!
泥棒が入ったら入ったで通報してくれなくっちゃ。
和尚:
泥棒? はて?
泥棒なんぞワシのところには入らなかったが・・・。
警官:
和尚、とぼけてもらったら困るよ。
◯○というヤツが和尚のところに入って金と着物を盗ったと白状しているんだ。
和尚:
ああ、その人なら、あれは盗んだんではなくって、ワシが上げたんだよ。
その証拠に帰り際に「有難う」と言って帰ったよ。
留置場でその和尚の言葉を聞いた泥棒は涙を流して😭感激し、刑期が終わると、いても立ってもいられずに和尚の門を叩き、弟子にしてもらいました。和尚はその元泥棒を「経理係」として使いましたが、終生間違いなく仕事をこなしたそうです。
というお話だよ。
七海:
へ〜。何と言ったらいいかわかりませんが、普通とは違うカラクリですね!
普通なら泥棒に盗られまいとしたり、すぐに泥棒が捕まって痛い目に遭わせて反省してもらい、更生を期待するところですが、和尚はお金を上げた上に着物も上げて、そして警察にも言わなかった。
でも、泥棒は自主的に更生する結果になった。
う〜ん、七里和尚の話、実に興味深いです。
和尚:
「損して得取れ」
ていう言葉があるよね。
和尚はもっとも
「得を取ろう」
なんていう腹づもりさえ、なかったと思うけれど・・・。
七海:
泥棒さんが更生する保証がないですものね。
私も七里和尚の行動は「更生を期待してのものではまったくなかった」と思います。
たまたま警官が来てお話のような経過をたどったけれど、たとえば泥棒さんが捕まらずに逃げ切っていたら、和尚は
「損して損」
ですものね。
和尚:
キリストの言葉に「上着を盗られたら、下着をも上げなさい」という意味の言葉があったことを今、思い出したよ。
和尚はもちろんキリスト教ではないけれど、
「お金を盗られたら、服をも上げなさい」
を実践したんだね。
この手の話はまだたくさんあるんだよ。
たとえば新しい家を買うためにコツコツと貯めておいたお金を詐欺師の人が来てね、「詐欺師だとわかっているのに渡してしまったお父さんの話」とかね・・・。
まあ、ちょっとブレイクしよう☕
和尚:
さて、それでは続きと行こう。
七海:
はい、お願いします。
詐欺師に詐欺と知っていて大事なお金を渡したお父さんの話だったですね。
和尚:
それはこんな話なんだ。
ちなみにこれも実話だからね。「道徳教育のための作り話」ではなくってネ・・・。
【わかっていて詐欺されたお父さんのお話】
とあるところに一般的な苦労はそれぞれに抱えながらも幸せに暮らしていた4人家族がいました。
お父さんは将来、子どもたちが大きくなったときにもう少し大きな家を買うためにそう多くはない給料から節約をしながらコツコツとお金を貯めていました。
かなり貯まって来たある日、玄関に訪問者が現れ、自身の惨状を述べた上で「必ず返すからお金を貸して欲しい」とお父さんにお願いしました。
お父さんは「ウチは今のままで日々の生活はやっていけるけれど、この人は困っている」と貯めておいた家を購入することが出来るほどのお金をその人に渡しました。
家族を含む、身の周りの人たちは「その人は詐欺だよ。騙されたんですよ」とお父さんに言って来ました。そして周囲の心配通りにその人は約束の期限を過ぎても現れず、その人が詐欺師だったことが明らかになりました。
そうわかったときでも、お父さんは文句や冷静さを失う態度はまったく取ることがありませんでした。お母さんや子どもたちは将来の新しい家を楽しみにしていたので「かなり残念」でしたが、そういうお父さんに対して何も言うことが出来ないでいました。
お父さんはまた一から貯金を始め、お母さんも少しずつお金を貯めて行きました。
ある時、お母さんが素敵な一戸建ての物件を目にしました。
「ああ、なんて素敵な家なんでしょう!! こんな家に家族で住めたらどんなに素晴らしいことかしら」とお母さんは思いましたが、お母さんの株が思いがけず上がるような幸運に恵まれていたとは言え、まだまだとうてい売値に貯めてきたお金が足りるはずがありません。
お母さんが残念がっていたある日、見知らぬご婦人が訪れてきました。
ご婦人:
ごめんください。
私はその昔、主人があなた様のお宅のご主人にウソを言ってお金をだまし取った人の家内です。
その節は大変申し訳ないことを致しました。
主人は亡くなりましたが、そのお金のお陰で私たち家族は何とか今日まで生きてくることが出来ました。本当に有難うございました。
今日は主人が盗りましたお宅様のお金をわずかばかりではございますが、利子をお付けしてお返しに上がりました。
・・・ということで、お金が戻ってきたわけですが、お母さんが金額を見てビックリ😱しました。なぜなら、利子を付けてもらった金額が
「ちょうど欲しい家を買うのにまさに足りない金額だった」
からです。
七海、・・・というお話なんだよ。
私が七海に一見、メンタルに関係のないこのような話をするのも、当たり前のことだけど、こういう話を私が話さなければ、七海はもしかしてこういう話があることも知らないかもしれないし、また七里和尚の話のように俗に言う悪人が更生するこうしたカラクリがあることにも気づかないかもしれないでしょ?
そしてね、実際のところ、こうした話が精神の中に入っているのと入っていないのでは、やはり、どこかで「心の余裕」みたいのが違ってくるんだよ。
もちろん、知った途端に今すぐ「心の余裕」が出るというわけではないよ。
「知らないうちに」、そうなってくるものなんだよ。
そういう面からしたら、一見関係のない、こうしたお話を「メンタル法話」でなぜ、私が七海に聴かせているか?・・・ということも少しわかってもらえるんじゃないかな?
七海:
はい、わかります。
それにしても、こうしたお話がこの世にはあるんですね。
和尚:
七海が将来女子ツアーで立派なプレーヤーになるには、周囲の人と同じようなことをやっていてはなかなか実現できないよね。
言ってみれば超人的な力を発揮する必要があるわけだ。
このメンタル法話を聴き続けていれば、自(おの)ずとわかってくることだけど、今日お話したような話は「人を超える道」をも示しているんだよ。
だって、七里和尚の取った行動も、詐欺とわかっていて騙されたお父さんの行動もなかなか普通の人が取れない行動でしょ?
七海:
確かにそうですね。
和尚:
だから、七里和尚にしても、そのお父さんにしても、「超人的」というわけだよ。
だけど七海、一つ気をつけてもらいたいところがあるんだ。
七海:
気をつける?
和尚:
そう。
こうした話を私は今後、七海にいくつも話すことになると思うんだけど、七海が「超人になるという成果を期待をして、たとえば今回お話した七里和尚やそのお父さんの取った方法を覚える」ということではないことに注意⚠してほしんだ。
私は七海に
「超人になるためにこういう状況になったら、こう行動する」
ということを覚えてほしいから話しているわけじゃないってことね♫
なぜ、話しているかというとまず
① その他大勢の人が選択する道と異なる道が存在すること
を七海に知ってもらいたいからというのと、その次に
② その道を体得してもらうこと
のためなんだよ。
この二人だけではないけれど、これからメンタル法話で大勢登場してくる超人たちは確かに「ある道」の上を歩いているんだ。
そして人間離れした技や態度・・・そうしたものにギャラリーをはじめ、多くの人が惹(ひ)きつけられるんだけど・・・を
「その必要なその瞬間に発揮する」
にはその「ある道」の上を歩いているということが絶対条件なんだ。
それは暗記できるノウハウのような「決まった道」ではない。
そんなことだと取り違えたら、その「ある道」に笑われる😂よ。
七海:
そうなんですか・・・?
何かつかみどころがないものなんですね。
和尚:
まさにその通りだ!
「道なき道。でも確かにある道」
といったところだね😉
でも、いくら「道なき道」と言っても、まずは「その道があること」を知らされなければ始まらない。
今回の七里和尚やそのお父さんのお話は七海に
そうした「見えない道」があるんだよ〜
ということを知ってもらうきっかけということだね。
そして「その道」を体得することは七海が
本当の意味でゴルフを極め、その極めたゴルフから七海の生きざまが自然に現れて来るためにはぜひとも必要なこと
なんだ。
七海:
何だか、身が引き締まります。
けど和尚、「手がかりのない道」を探すための「入り口」の手がかりがないのですが・・・。
和尚:
気が付かないだろうけど、七海はその「ある道」に向かって歩き出しているんだ。
七海:
えっ?
そうなんですか??
和尚:
うん、間違いなく。
それは七海が「技術と同時にメンタルも大事だからしっかり学びたい」という気を起こした瞬間に「ある道」に続く、入口の門をくぐったんだ。
その気を仏教では
「発心(ほっしん)」
と言うんだ。
だから、このまま歩いていけばいい。
そして、「ある道」を探す際のもう一つの頼みの綱は
「自分」
だ。
七海:
このメンタル的にヨタヨタしている
わ・た・し
が頼みの綱ですか?
和尚:
ああ、そうだよ。
「ある道」を歩むということは「真実の自己を知る」ということだからね。
七海がそこに近づくに従って七海らしい、七里和尚やそのお父さんみたいな
「超人的な行動」
が取れるようになる。
でも、私に言わせれば
「超人的な行動」の方が「当たり前な行動」
で
「大勢の人々が取っている行動」の方がよほど「超人的」だと思う
けどね。
七海:
えっ、和尚・・・私、わからなくなってきました。
付いて行けてません。
和尚:
まあ、今は気にしないで大丈夫。
七海が「ある道」を探して歩んでいけばある時、
「ああ和尚の言うとおりだわ。超人的な行動って和尚が言うから、どんなに大変かと思っていたら、この道を知る前にやっていた行動のほうがよほど労力がかかって成果が出ない道だったわ」
と自分で言っていることに気づくよ。その頃、七海がどのようにツアーでパフォーマンスを発揮しているのか私も楽しみだよ。
七海:
和尚、今回ははじめに「お話を聴いて」と言われたので「今回はちょっと息抜きかな?」なんて思っていましたけれど、ちゃんと私のメンタル改善に話はつながっていたのですね。
今後、どのようなお話が聴けて、そのお話によって私の精神が広がり、私が「ある道」に接近していくのか・・・楽しみ😄です。
次回もよろしくお願いします。
失礼します。
今回もお読みいただきまして有難うございました😄
また一緒に楽しみましょう!!