最近、私は現在世界ゴルフランキングの1位に座っている(2018年10月14日現在)ダスティン・ジョンソンの先生であるブッチ・ハーモン氏の講演会(※1)から同氏の指導哲学を学んだので、ご興味のある皆さんにおすそ分けしたいと思います(※2)。
※1 出典:Met PGA Spring Educational Forum 2016 Butch Harmon氏の講演
※2 以下は須崎が翻訳し、要約したものです。各見出しは須崎がその内容から設けたものであり、実際の講演の中では登場しないことをご了承ください。
◎ 私は何も「発明」していない
今日、私は「ゴルフを教えること」を私がどのようにやってきたかについて皆さんにお話しします。
今日、お話することはすべて試行錯誤、偉大な先生たちとの会話や彼らの話を聴くこと、ゴルファーを観察し、良いスウィング、悪いスウィングを観察することから学んだことであり、またその内で私にとって「効果があったもの」です。
ということで、私は自分で発明したものというのはないんですね。
◎ 私は「システム」というものを信望しません
なぜなら、
「同じゴルファーはいない」
と思っているからです。
あるゴルファーに教えることは、別のゴルファーとは全く逆かもしれません。
それは皆違う問題を抱えているからです。
そういうわけで私はシステムというのを信望していないのです。
◎ 今日皆さんと分かち合うもの
今日は皆さんと私が最も影響を受けました二人の先生から教わったことを分かち合いたいと思っています。
一人は私の父(クロード・ハーモン※1)とジョン・ジェイコブス(※2)です。
※1 1948年のマスターズ優勝者。ブッチ・ハーモン氏はサラブレッドなのです。←須崎註
※2 ジョン・ジェイコブス氏につきましてご興味のある方は本投稿最下部にございます「関連記事のご紹介」をご覧ください。
どうしてその二人かと言いますと、その二人は教えるということを
とてもシンプルに考えていた
からです。
「軌道」、「クラブフェース」、それにおそらくゴルフスウィングでもっとも重要である「インパクト」というように・・・。
◎ 飛球の観察と科学データ
今日(こんにち)、私も使っているトラックマンなどの科学技術が進歩し、ゴルフを教えることに関して「コミュニケーションの技」や「弾道を観察する技」が置き去りにされています。
父が世界一流の選手を指導しているのを見ていて、私は「彼が必要としている情報はすべて飛んでいるボールから得ることが出来ていた」と感じました。
「方向」、「スピン」、「高さ」、「軌道」などがインパクトでの「スウィング軌道」や「クラブフェース」に関する気づきを与えていたのです。
今日(こんにち)、そういうことが見失われていると感じます。
飛んで行っているボールを観ないで、たとえば「3度インサイドから入っていますね」というようにトラックマンの数字ばかり追っている若い指導者を良く目にします。
数字は「何が起こっているか」ということをあなたの生徒さんやあなたに伝える「情報」です。
それですべてだと思っていたら、あなたはあなたの生徒さんにベストなものを提供することは出来ません。
私はトラックマンなどの機械はどちらかというと道具を選ぶ際、特に上級者のクラブを選ぶ際に使用します。
私は教えるときにはそうした機械を用いません。なぜなら、私の目の中にトラックマンを備えているからです。
飛んでいるボールを見れば必要な情報はすべて得られます。
◎ ゴルフを教えるということ
私はこの仕事を愛しています。
人びとは私がツアープレーヤーばかり見て来たから私の経歴があると思っています。
でも、私はほとんどの時間あなたたちが面倒を見ているゴルファーのような人たちを見ているのです。
◇ ゴルフを教えることは「特別なこと」
ゴルフを教える人たちにいくつか申し上げたいですね・・・特に若い人たちに。
プロフェッショナルとして、ゴルフを教えるということは
「特別なこと」
なんだということを理解しないといけないですね。
あなたのところに習いに来る彼または彼女は、その人たちの一日の内のその時間を割いて、お金を支払い、「あなた」を選んで「あなた」を信じて習いに来て下さっているのです。
あなたはそのように理解してお客様に対応する必要があります。
一番難しいレッスンは「その日の最終レッスン」でしょう。
6時間も8時間もレッスンしていれば疲れ切っています。
その最終レッスンにこちらがお金を払ってでもお断りしたいお客様がいらっしゃいます。
しかし、そのお客様に対してもその日の最初のお客様に対するのと同じ情熱と心遣いを持って教える必要があります。
そのことが私がレッスンをするということが「特別なこと」だということです。
お代に関係しません。
「あなた」に支払い、「あなた」を選び、「あなた」に会いに来られている
からです。
いつでも「特別なこと」なんだということを理解して、そのように接してほしいですね。
◇ 「より少なく」が「より多く」ということ
あなたが
「より少なく」言えば言うほど、生徒さんたちはあなたのその言葉から「より多く」を得る
ことにになります。
さて、私はアベレージゴルファーをレッスンする時、私が「スウィングの癌」と呼んでいる、その人のスウィングを崩しているところを探します。
そして、仮に1時間のレッスンであればその一点だけを直そうとします。
なぜなら、その一点を直すことで3~4か所が直るからです。
このことを理解する必要があります。
1か所を直すために5~6か所直すことはしたくないですね。
インストラクターはより多く教えればより多くを得ることが出来ます。
私の教え方は10年まえ、20年前とは異なります。
私たちは学ぶからです。
私たちは提供するレッスンから学ばなければなりません。
たとえば、あなたは「今まで見たこともない」ようなひどいトップ・オブ・スウィングをしながらうまく打つ生徒に出逢うかもしれません。
「ええ? どうなってるの?」とあなたは動画を繰り返し見ることでしょう。
そして、2年後に同じようなトップ・オブ・スウィングの生徒が現れるかもしれません。
そして、「ああ、2年前にこんな人がいたな。あの人はこうやっていたな」と気づくのです。
それが知識というものです。
そして、それが知識を得る方法です。
あなたがどんな腕前を持とうと、どんなに知識があろうと・・・
一番大事なことはコミュニケーションの技術
です。
あなたが生徒に話そうとしていることを適切な方法で生徒が理解できるように伝えることが出来なければあなたはその人を助けていることにはなりません。
<中略>
あなたがすべての生徒に同じことを教えているのであれば、いい仕事をしているとは言えない。
なぜなら、
「みんな違う」
からです。
◇ 「ゴルフを教える」のか? 「ゴルフのプレーの仕方を教える」のか?
私は人に「ゴルフのプレーの仕方を教える」ことが好きです。
「ゴルフを教える」というのはスウィングだけを教えるということです。
◇ 「良い先生」とは?
まず明らかですが、
「知識」があるかどうか
です。
「知識」を得る方法についてはそうですね、こういうセミナーで得るのが一つの方法ですね。
私はよく
「あなたが賛同できないインストラクターのセミナーに行きなさい」
と言います。
なぜか?
それは
「そこから何かしら学ぶものがある」
からです。
あなたはそこからいままで知らなかった伝え方や知識を学ぶのです。
それがとても大切なことなんです。
決して決して学ぶのをやめてはいけません。
72歳(2016年当時)になった今でも私はゴルフの議論に耳を貸し、記事を読みます。
出来るだけ読み📖なさい。
出来るだけ見👀なさい。
同じことを6~7通りの形で表現できるようにする必要があります。
<中略>
あなたの言っていることに同意せず、「うまくなっていない」と不満を漏らすような態度の良くない生徒が見えたとき、いつも悪い雰囲気で来る生徒が見えたとき、あなたは彼から「彼の子どものこと」、「彼の仕事のこと」など何かを学ぶ時です。
そうして彼の注意を
ゴルフから離す
のです。
なぜなら、あなたがゴルフの指導を続けたなら彼はもう飽き飽きしているのだし、あなたの指導で上達していないと思っているわけですからね・・・それでも彼はあなたがいいと思って「あなたのところに」来るのです。
◇ 「教えること」と「コーチング」について
「教えること(ティーチング)」と「コーチング」は異なるものです。
「教えること」は生徒に何かをすることを教えることです。
「コーチング」とは「刺激を与えて動機づけすること」で時に「教え」、時に「コーチ」します。
動機づけすることは「教えること」の大きな役割を占めます。
私は若いインストラクターが何度も同じことを繰り返しているのを見るとイライラしてきます。
グリップ、姿勢、方向取り、ボールポジションといった基本は変わりません。
何度も繰り返しているのに基本が出来ていないのはあなたに責任があります。
◇ レッスンについて
多すぎる情報を提供して生徒を混乱させないようにしなさい。
「あなたが少なく言えば言うほど、生徒はそこから多くを得ます」
私は「反対」ということをレッスン時によく使います。
たとえばアウトサイドインのスライスボールを打っているゴルファーにはすべてを逆にしてフックボールを打ってもらいます。
またティーアップしたボールを7番アイアンでの「スローモーション」スウィングで打ってもらうことも多いです。
これは体で動きを感じてもらうためです。
ちなみにタイガー・ウッズ選手やリッキー・ファウラー選手のスウィングを直す際にもこのスローモーションドリルを使いました。
タイガーはこのドリルに飽き飽きしていましたがね。
最後に「感じていること」と「実際」は異なるということを生徒に教えることが大切です。
その意味では動画は役に立ちますね。
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さて、まだ続きますので残りは次回と致しましょう。
今回もお読みいただきまして有難うございました♫
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